医学部地域枠のメリット・リスクについて厚労省資料から再考する

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医学部受験

 国立大学医学部、私立大学医学部問わず、近年医学部の地域枠の占める割合は高くなっています。これは、厚生労働省の医学部地域枠に対する考えが如実に反映されています。

 これは厚労省の医師需給分科会の医学部定員に関する資料です。
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000695877.pdf
今後医学部定員は一般枠が減少、地域枠が増加ないしは現状維持で推移していくことは間違いないでしょう。 (医学部定員は厚労省が管理しています)

 そして、地方都市の医療は医学部地域枠卒業の医師中心で行っていこうという計画なのだと思います。このような地域枠の状況の中で、今回は、医学部を目指す高校生向けに、医学部地域枠の仕組みやメリット、リスクについて書いています。

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地域枠の奨学金について

 そもそも医学部地域枠の奨学金の多くは、各都道府県単位で自治体の予算から捻出されています。多くの自治体では、医学部地域枠の1~6年生の間に月10~20万円貸与し、地域枠貸与期間の1.5倍の期間、各県知事が指定する医療機関等に勤務することで全額免除されます。そして地域枠奨学金の利率は年10%に設定されています。
 押さえておきたいのは、利率10%は複利であるという事です。

毎月20万円の地域枠奨学金貸与の自治体では、医学部地域枠卒業時点での借入金は元本1440万円に加えて利子約513万円となり、合計1953万円となります。

 万が一地域枠を卒業後、出身大学の医学部の地元に残りたくなくなっても、地域枠奨学金を返済すればいいと思っていたら、その時には利子含めた2000万円弱の地域枠奨学金を一括で返済しなければなりません。医学部地域枠の奨学金の仕組みについては各自治体で異なる条件の場合もありますので、詳しくは医学部地域枠の募集要項を確認してください。


 また、医学部を卒業できないリスク、医師国家試験に合格できないリスクというのも確実に存在します。すべての医学部を考慮すると、6年後にストレートで医師になれるのは80~85%ほどです。もちろん、最終的に医師となれる割合はもっと高いでしょう。しかし、当然ながら医師として働かなければ地域枠奨学金は一括返済となります。

地域枠の離脱は、病院就職の妨げとなる

 令和元年度より厚労省の審議会によって地域枠の離脱に対する対応が示されました。

県や大学に十分に確認することなく、県や大学が地域枠離脱を妥当と評価していない研修希望者を採用決定した臨床研修病院に対して、臨床研修部会でヒアリングを行った上で、規定に則り医師臨床研修費補助金の減額等を行う

第2回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会資料(R1/7/3)より

  医師国家試験を卒業したら、2年間の臨床研修が法律で義務付けられていますが、この臨床研修先の病院への就職に際し、地域枠を離脱した学生を採用した場合、病院の補助金が減額されることになったのです。つまり、地域枠を離脱した学生は臨床研修病院に就職するのが困難となります。

今後、都道府県の同意を得ずに専門研修を開始した者については、原則、日本専門医機構の専門医の認定を行わないこととしてはどうか。認定する場合も、都道府県の了承を得ることを必須としてはどうか。( 概ね了承。)

第2回医道審議会医師分科会医師専門研修部会資料(R2/7/17)より

  また、臨床研修後、専門医取得のための専門研修に対しても地域枠医師が地域枠を離脱した場合、専門医の認定が受けられないこととなりそうです。

 これらの厚労省の決定により、医学部卒業後に地域枠を離脱することは金銭面での負担に加えて、医師としての将来を狭めることとなり現実的ではなくなりました。

地域枠離脱の理由とは

 では、そもそも地域枠の離脱理由として何が多いのでしょうか?

 上の厚労省資料によると、地域枠離脱の原因で最も多いのは希望する進路と不一致のため、となっています。これを踏まえると、医学部地域枠における最大のリスクは、希望する進路と一致しなかった場合に今後は地域枠の離脱が極めて困難である、という事です。
 これは医学部地域枠を志望する高校生や保護者の方々に知っておいてほしい点です。

地域枠のメリット

 今後、日本の人口は減少に向かい、医師数は確実に増加します(医学部定員の近年の増加により)。恐らく、近いうちに医師の数だけ見ると日本の医師数は十分であるという状況に近づくでしょう。
 しかし、医師の偏在という問題は解消が難しく、都市部では医師が飽和し、地方では不足するという状況が想像できます。これを解決するために、厚労省は医学部地域枠の定員を増加させ、地域枠離脱に対する様々な施策を実行に移しています。まずは医学部を目指すうえで、このような状況は理解しておく必要があります。

 そのうえで、医学部地域枠のメリットとは奨学金です。これにつきます。
 医学部を目指すうえで経済的に厳しい場合でも、医学部の地域枠の奨学金を利用することで進学が可能となります。一方で、少なくとも卒業後9年間はその都道府県で確実に勤務する必要があり、それを回避するのは極めて困難であるという事を理解する必要があります。

 これらを踏まえ、日本の今後の各自治体の地域医療を支える強い意欲のある学生が地域枠を利用し、医学部に入学してくださることを切に願っております。

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